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最高裁判所第二小法廷 昭和45年(オ)975号 判決 1971年10月22日

上告人

吉見一徳

代理人

江谷英男

蔵村睦美

被上告人

吉見ヒサ子

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人江谷英男、同藤村睦美の上告理由について。

原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の認定したところによれば、被上告人(大正一〇年生)は、吉見一夫の姪で、昭和二九年終り頃から、二児を連れ、一夫およびその内縁の妻松股サヨと同居して、一夫方の家事や建築請負業の事務の手伝に従事し、同三一年八月頃サヨが病臥してからは、同人の看護にあたるとともに、一夫方の家計をとりしきるようになり、同三三年一月にサヨが死亡した後も一夫との同居生活を続けていたこと、一夫は、明治二九年生れで、昭和三九年七月一〇日に本件養子縁組の届出をした当時は、すでにかなりの高令に達していたばかりでなく、病を得て、建築請負業をもやめ、療養中であつたものであり、被上告人に永年世話になつたことへの謝意をもこめて、被上告人を養子とすることにより、自己の財産を相続させあわせて死後の供養を託する意思をもつて、本件縁組の届出に及んだものであること、なお、縁組前に一夫と被上告人との間にあつたと推認される情交関係は、偶発的に生じたものにすぎず、人目をはばかつた秘密の交渉の程度を出なかつたものであつて、事実上の夫婦然たる生活関係を形成したものではなかつたこと、以上の事実が認められるというのであつて、この事実認定は、原判決挙示の証拠に照らして、肯認することができる。そして、かかる事実関係のもとにおいては、養子縁組の意思が存在するものと認めることができ、かつ、右の過去の一時的な情交関係の存在は、いまだもつて、あるべき縁組の意思を欠くものとして、縁組の有効な成立を妨げるにはいたらないものであるとした原判決の判断は、正当として是認することができる。原判決の認定・判断に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(小川信雄 色川幸太郎 村上朝一 岡原昌男)

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